Twitter上で誘導加熱が流行って(?)いたので自分も作ってみました。

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1石で動作する回路です。
IHクッキングヒーターや炊飯器、電子レンジのインバータなど、わりと身近にある家電に使われてる方式だったりします。

缶に水入れて沸騰させてみました。



電源には24Vの電源装置を使っています。本当はAC100V突っ込みたかったのですが、高耐圧な素子がなくて今のところ24Vで我慢しているところです。


基本的な回路図です。

1石共振

L1が加熱コイル、C1が共振コンデンサ、M1がメインのスイッチング素子です。
回路の簡単さでは自信があります。将来保護機能などの拡張も楽にできるようになっています。

まず、「動作開始」と書いてある電源から一瞬電圧が出力されると、回路が動作し始めます。※一瞬(1usくらい?)じゃないと動作おかしくなるかも。
その先にあるORが1になると、さらにその先の「A」の回路に入力されます。この回路はパルスの立ち上がりエッジを検出する回路で、連続的に1が入力されても一瞬だけ1を出力してくれます。

赤:ORの出力(A回路の入力)
緑:A回路の出力
A回路


Aの回路の先にはSR-FFがあります。Sに1の信号が入力されるのでQが1、そしてMOSFETがONになります。そしてL1に電流が流れ始めます。
この時、MOSFETのドレインの電圧は(理想では)0Vです。ドレインの横にある分圧回路で分圧されたあと、コンパレータに入力されます。
そういえばこの分圧回路はあんまり分圧の意味をなしていません、どちらかと言うと高電圧が入力された場合にはダイオードを通ってクランプされるような動作をします。
話を戻しますと、コンパレータの-には分圧された0V、+に基準用の電圧がかかるのでコンパレータの出力は1となり、ORに入力されます。
今度は「B」の回路を見てみましょう。ORの出力が1のとき、50kΩの抵抗を通ってじわじわと1000pFのコンデンサに充電されていきます。電圧が上がっていき、しばらくするとその先にあるSR-FFの閾値に到達し、Rが1と判定されるのでQが0になり、素子がOFFになります。
つまり50kΩと1000pFの大きさで素子をONしている期間を決定しています。
(ちなみにこの時Aの回路は一瞬だけ1になるのでORの出力が1でもAの出力は0になっています)

赤:ORの出力(B回路の入力)
緑:B回路の出力
B回路


素子がOFFになるとL1の電流も途切れたいところですが、そういうわけにはいかず、かわりにC1へ電流が流れていきます。これでなんとなくL1とC1で共振します。
この時はD電圧は高電圧になってるので、コンパレータは出力0となり、Aの回路もBの回路も出力0なので、SR-FFは変わらず素子はOFFのままです。

L1とC1が共振するとなんかしらんが勢いで勝手にドレイン電圧が0Vまで戻ってくる点があります。
この0Vになった瞬間、コンパレータが1となり、SR-FFが1、そしてMOSFETがONになります。
このようにして発振が続いていきます。

そして注目してもらいたいのが素子のON/OFF時のドレイン電圧です。
ターンオフ時はC1に充電される時間があるため、いきなりドレイン電圧が上がることはなく、0Vから徐々に電圧が上がっていきます。その後、共振で0Vまで戻ってきます。今度はこの点で素子をONにします。
要するにうまいことZVS動作をしていて素子のスイッチング損失がほとんどゼロにできるんです。考えた人頭いいですよね...

赤:ドレイン電圧
緑:ゲート電圧
zvs


「動作開始」は一瞬電圧を出力します。こいつがないと発振が開始しません。
コンパレータの基準用電源はZVSタイミングの調整と、MOSFETのRdsやIGBTのVce_Satの対策みたいなものです。
分圧後のコンパレータへの入力なんですが、寄生容量のせいでなんか遅れ気味になっちゃうみたいです...。自分のやつはこれが逆にいい感じの動作をしてくれててZVSタイミングを調整できます。でも寄生容量利用するとか気持ちわりぃよね

素子のON時間の設定はBの回路の抵抗値で調整できるのでここを半固定抵抗またはボリュームにして出力の調整をすることが出来ます。B回路の後ろにコンパレータくっつけても良いかもしれません。
ただしあんまりON時間を短くしすぎると周波数が高くなったり、電流があまり流れなくなってドレイン電圧が0Vまで戻ってこなくて発振が止まっちゃったりするので注意です。

また、上記の回路はすごく基本的な部分だけの回路図なので何の機能もついていません。過電圧・過電流検出回路をつけたり、動作/停止の制御もできると良いかもしれませんね。
あと回路図上ではゲートドライバも省略してるので実際作る時は付けましょう。


自分は上記の制御回路をPICマイコン内に組み込んで簡単に仕上げました。IH本体の回路は中でロジック回路組むモジュールとコンパレータと周辺回路で完結してるので、マイコン的お仕事は動作開始のパルスを出すことしかしていません。

DSC_0012


この回路はZVS動作できるのが良いところですが、自分のは発熱が結構あるのでうまくZVS出来てないのかもしれないです。オシロで見た感じはまぁZVSどうなになってる気がするんですけどねぇ...。ON抵抗で普通に発熱してるだけかもしれないです。わかんないです。

黃:ゲート
青:D電圧
紫:D電流

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なんか電流波形がひどいね
とりあえず簡単に作れたので満足しています。




===追記===
回路いじってたらもうちょっと簡単にできました。
基本構造は同じです。試作してないのでわかりませんが動きそうな気がします。
OR(A1)の後ろ~バッファ(A2)の間の部分で、立ち上がりエッジ検出とON時間のタイマーを兼ねました。真ん中の10kΩの抵抗(R2)を調整すれば出力可変(ON時間可変)できるはずです。
RS-FFが消えたのは大きいと思います。マイコンに組んだとしても外付け部品が少なくなるのは嬉しいことです。

キャプチャ