ぽんず製造所

御アクセスありがとうございます。閲覧にあたりましては「当ブログについて」の内容をご理解いただいた上でお楽しみください。また、当ブログの内容はあくまで趣味で行ったものであり、学術的ではないことをご了承ください。

レールガンに同軸ケーブルを使ってみる③実験編

①理論編②製作編の続きです。
この記事では実際に射撃を行い、並行ケーブルと同軸ケーブルの比較を行います。


  実験方法
レールガンを実際に撃ってみて、同軸ケーブルを使用したときと並行ケーブルのときの比較を行います。
比較のポイントは
①ケーブルが動くか動かないか
②出力、効率はどうか
の2点とします。

以下の回路図で実験を行い、このうちの電力伝送ケーブルのみを交換します。
実験回路図

レールガン本体は携行型レールガンに搭載しているものを使います。
実はレールガン2号機で実験したかったのですがどうも不調だったので急遽変更しました。まぁ携行型レールガン搭載品はパラメータが詳しくわかってて実験しやすいってのもありました。
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レールはキレイに研磨しておき、損傷が発生した場合は再研磨、続行できそうならそのまま継続します(分解するとそっちのほうが条件大きく変わりそうなので)。損傷発生判定は目視だけでなく発射時のレール間電圧の監視も併用します。結果的には再研磨せずぶっ続けで行えました。
写真は射撃前のレール(片側)です。
DSC01423

プロジェクタイルはいつものアルミのコの字アーマチュアです。なるべく同じ質量になるようにします。

レールガンの電源は実験用電源を使います。入力エネルギーは450 V 5600 uF※容量抜けありの最大560 Jです。これはレールガン本体のパラメータと相談していい感じのものを選びました。
実験用電源450V5600uF

ケーブルの結線はこんな感じ。ケーブルの定数測定における条件④と条件⑥のイメージです。2本ケーブルを使って純粋に"並行"か"同軸"かの違いのみを作り出すようにしています。
レールガン側しか写ってないですが電源側も同じです。
↓同軸ケーブルの場合の接続
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↓並行ケーブルの場合の接続
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計測は弾速やプロジェクタイルの質量の測定、動画撮影のほか、各点にプローブをつけて(回路図参照)電流・電圧波形を取得して実験の考察に利用します。ロゴスキーコイル出力の積分や素子間電圧算出のため、波形はPCで処理します。
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製品のロゴスキーコイルを買ったので、レール電流はわりと信用できそうな値が出ると思います。

全体的にはこんな感じ(動画の切り抜き)
電源部とレールガンは1 mくらい、レールガンと弾速計のワイヤーカット部は10 cmくらい離れてます。レールガンは土台に固定されています。
全体

実験は同軸ケーブル、並行ケーブルで各3回ずつ行いました。回数が足りない?一発一発わりと時間かかってそんなに実験できなかった



  実験結果・考察
データとりあえず全部載せときます 全部載せる必要なさそうですけど

・動画


・数値と出力エネルギー・効率グラフ
数値データ
グラフ

・電圧電流波形
素子間電圧のグラフでは各測定点の差分を取ったりしています。
同軸波形
並行波形


・おまけ プロジェクタイル質量の写真
質量1


①ケーブルが動くか動かないか
動画を見れば一目瞭然、並行ケーブルは動き、同軸ケーブルは全く動いていません。

②出力・効率はどうか
数値やグラフの通りで、同軸ケーブルのほうが出力エネルギーは約1.2 J(7 %)、効率は0.32 ポイント(9 %)高くなっています。


3回ずつしか実験できませんでしたが、それぞれの条件においてまとまりのある結果が得られており、明確な差が見られます
波形も条件ごとでほぼ同じであり、安定した実験ができていたようです。
波形は全体的に異常はなく、もはやお手本みたいな波形を取ることができました。速度起電力、アーマチュア離脱後のアークの電圧、クローバ回路転流など、かなり綺麗に取れてます。

ちなみに、6発射撃後のレールは下の写真の通り無損傷で綺麗なままでした。
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DSC01456

波形からもVrailが起電力+電圧降下分程度より上昇していないことから(※アーマチュア離脱より前)、接触不良も起こっていなかったと言えます。運よく接触が良かった。
レールガンでは撃つたびにレールが損傷して出力が落ちるので、後半の実験=並行のほうが出力が低いのは損傷のせいなのでは?とも思いましたが、それも否定できそうです。



さてそれでは、同軸のほうが出力・効率が良い理由がなんなのかを考えてみます。
今のところ考えられるのは
・ケーブルが動かなくて運動エネルギー損がなかったから説
・配線インダクタンスが小さくできたから説
です。

まずは運動エネルギー損説について計算してみます。ただ、ケーブルは雑な動きをしているため、かなり大雑把になります。
主に黒いケーブルだけが上に持ち上がってるように見えるので、赤いケーブルは運動エネルギーゼロということにします。
ケーブルは5フレーム(240 FPS)で約2 cmくらい動いているので、0.48 m/sくらいです。
ケーブルの重さは1本約0.22 kgなので、運動エネルギーはおおよそ0.1 Jということになります。
思ってたよりもかなり小さく、ガバガバ計算を修正したとしても運動エネルギーによる損失が影響しているとは考えにくいかもしれません。


それでは次に配線インダクタンス低減説です。
波形を見てパッと目につくのは、ケーブル電圧Vwireとレールガン投入電圧Vinです。
同軸の場合はVwireは小さくVinはコンデンサ電圧に近い電圧を投入できていることがわかります。
一方、並行の場合では配線Lが大きいためVwireが大きく、Vinが小さくなっていることがわかります。
このような波形は理論編で紹介したシミュレーション波形のとおりです。

条件を実測に合わせて再度シミュレーションを行い、実測波形と重ねてみると、まぁまぁ一致していることがわかります。ちょっとずれてますけど測定点とかパラメタ誤差の影響があると思います。
同軸と平行を比較すると結構違います。
実測計算比較

シミュレーションでは"ケーブルの動き"を考慮していないにも関わらずシミュレーションと一致しています。
つまり、同軸と並行での性能差はほとんど配線インダクタンスによると考えられ....と言いたいところですが、正直なところシミュレーションも実はうまくできていない可能性...というかなんか考え方間違ってる気がしなくもないので、なんとも言いにくいです。

ですが運動エネルギー損の影響は小さそうということから、運動エネルギー損低減よりも、配線インダクタンス低減が大きく効いた可能性が高いと考えています。
やる気が出ればこの辺も実験して比較してみたいところです。


  まとめ
今回はレールガンの電力伝送ケーブルに同軸ケーブルを使ってみました。また、並行ケーブルとの比較も行いました。

並行ケーブルでは"ケーブルの跳ね"が生じましたが、
同軸ケーブルを使用した場合では"跳ね"が起こらず、出力・効率も高くすることができました。

同軸のほうが出力・効率が良かった理由は、配線インダクタンスが減らせたことだと考えています。
同軸ケーブルの並列数を増やすとさらにインダクタンスが低減できるようなので、より改善できる可能性もあります。

欠点としては配線の自由度が少ないことです。長さを調節したりするのはちょっと面倒だったり、配線が短すぎる場合は同軸にできない(orやる意味がない)かもしれません。


...ここまで書いておいて言うのもアレですが、パルスパワーの世界じゃ同軸使うのって常識なんスかね?某米軍のレールガンとか、某衛省のとか、動画を見るとやっぱり跳ねてません。あと電線をめっちゃ並列にしてるのは抵抗下げるとか配線の取り回しの問題以外にL下げる目的もあったりするんですかね?私はホンモノのパルスパワー装置を見たことがないのでよくわかりません...。
実験したらいい結果だったって記事だから許してくれ


まぁ何にせよ、同軸を使えば安全性と出力を手軽にアップできるので、使えるところには積極的に使っていきたいと思います。

レールガンに同軸ケーブルを使ってみる②製作編

前回(①理論編)からの続きです。
この記事では実験に使用する同軸ケーブルの製作と定数の測定結果について紹介します。


  同軸ケーブルの製作
同軸ケーブルは無線や測定器関係などの高周波関連によく用いられており、サイズや特性インピーダンスなどが規格化されて市販されています。
しかし逆に言えばソレ用で、レールガンに使えるようなサイズ感のものは無いようです(or入手性が悪い)。値段も高いし。特性インピーダンスも今回の用途では関係ありません。

というわけで、KIV線、平編銅線、熱収縮チューブを使って自作してみました。
同軸ケーブル

構造は下の写真(試しに作ったカットモデル)のようになっていて、KIV線が内部導体、その上の平編銅線が外部導体となり、絶縁・保護・固定用としてさらに熱収縮チューブをかぶせています。
平編銅線は筒状、柔軟性、大断面積など外部導体にちょうどいい性質を持っているのでおすすめです(というか製品の同軸も平編銅線使ってる)
端子部は流石に同軸構造にはできないので、平編銅線をほどいて適当に圧着端子を取り付けました。
カットモデル

今回作ったケーブルは長さ1 m、断面積は外部・内部導体それぞれ8 sqです。仕上がり外径は10 mmくらい。実験でケーブルの動きをよく見たかったので長めに作っときました。
並行ケーブルと比較するために2本製作しました。
色違いなのは熱収縮チューブの種類を比較するためと、結線をわかりやすくするためです。機能に違いはありません。

熱収縮チューブは以下の2種類を使いましたが使用感としてはあんまり変わりません。
デンカエレクトロン SZF2C-10.0R-1 SZF2チューブカラー 赤 φ10.0 1m
住友 スミチューブA 12.0 黒 熱収縮チューブ ツヤあり φ12.0
つや消し赤のほうがかっこいいから好き(見た目の問題)ですが黒のほうが丈夫な感じします。
作るときにφ10 mmではケーブルの挿入が非常にやりにくかったので、8 sqサイズで作る場合はφ12 mmをおすすめします。

今回作った1 m・8 sqのケーブルは1本約630円で作ることができました。


  ケーブルの測定
前述のように配線インダクタンスがレールガンの影響してきます。
そこで、今回作ったケーブルのインダクタンスと抵抗値をLCRメータで測定してみました。
並行ケーブルと同軸ケーブルの比較をするため、それぞれの状態になるように以下の配線で測定を行いました。

・並行ケーブル状態の条件
①内部導体-内部導体
②外部導体-外部導体
③内部導体-外部導体
④並行 2並列

・同軸ケーブル状態の条件
⑤同軸 1本
⑥同軸 2並列

図に表すと下のような感じです。
実験条件

測定周波数は100 Hz・1 kHz、10 kHz、100 kHzで行います。LCRメータは大学のいいやつをお借りしました。

なお、ケーブルの配置状態により値が変わる(特に平行ケーブル)ため、今回は真っすぐ伸ばして2本ができるだけ近くなるようにして測定を行いました。

条件がごちゃごちゃしててわかりにくいですが、実射実験では④と⑥を使うのと、1 kHz程度の周波数帯域なので、そこだけ見てもらえばいいと思います。色々知りたかったので色々測定しておいた感じです。


測定結果がこちらです。
インダクタンスL

抵抗値R

まずは平行ケーブルについて観察します。
インダクタンスは条件①の内部導体を通る経路が最も高く最大で1.3 uHほどあります。
②の外部導体の経路は0.85 uHほどです。
③は外部と内部を通っているのでちょうどそれらの中間の1.1 uHくらいですね。
④は並列前とほぼ変わらず0.88 uHです。1 kHz~10 kHzの間でグニャってしてるのが面白いです。
抵抗値は断面積通りの結果が出ており、①②③が5.5 mΩほどで、④が並列にしたので約半分の2.8 mΩほどです。これはサイズと抵抗率から算出できる計算値とも大体あっています。(実測では接触抵抗や低抵抗測定のため誤差が大きい)
また、周波数が高くなるに連れて表皮効果により抵抗値が大きくなっていくことがわかります。

次に、同軸ケーブルについて観察します。
インダクタンスは平行ケーブルよりも圧倒的に低く、条件⑤では最大0.30 uHほどとなっています。
そして、同軸ケーブルを2本並列にした条件⑥では0.18 uHと更に低くなっています。
抵抗値は先ほどとほぼ変わらず断面積通りですが、表皮効果の影響が小さくなっていることがわかります。


面白いと思ったのが、④のように並行ケーブルを並列にしただけでは低くなっていないにも関わらず、同軸ケーブルの並列では半分近くに低くすることができていることです。
並行ケーブルを並列にした場合ではケーブル同士が同じ空間に磁束を作って作るため、単線でも並列でもインダクタンスがさほど変化しなかったものと思っています。
一方で同軸ケーブルでは、それぞれのケーブル内にのみ磁束を作るため、同軸ケーブル自体がインダクタ素子のように振る舞い、インダクタを並列にしたときと同じようにインダクタンスを半減できたものと思っています。
この辺よく理解してないので詳しい人いたら教えてください。


というわけで、並行ケーブルよりも同軸ケーブルがインダクタンスを小さくできることを確認し、さらに同軸ケーブルを複数並列接続するとより低くできることがわかりました。
また、抵抗値も同軸ケーブルのほうが表皮効果の影響が少ないことがわかりました。



次はいよいよ射撃実験です。
次の記事→レールガンに同軸ケーブルを使ってみる③実験編

レールガンに同軸ケーブルを使ってみる①理論編

皆さんはレールガンを撃ったときにケーブルが跳ねた経験はありませんか?
こんな感じで↓


低エネルギーだからあんまり跳ねてないものの、大型になるとかなりの威力があります。

跳ねてるのは電源部(コンデンサ)からレールガン本体に電力を送る電力伝送ケーブルで、回路図で言うとこんな感じです。
概要回路図
今回はここに同軸ケーブルを使い、"跳ね"や諸問題を解決して出力・効率のUPを図ってみたという話です。
単純な配線の場合と同軸ケーブルの場合の理論的な検討と、実際にレールガンを撃ってみて、それぞれの比較をしてみました。

長くなってしまったので、①理論編、②製作編③実験編に分けました。①②はおもんないので③だけ見とけばいいと思います(?)



  並行ケーブル
単純に繋ぐとすると、下の写真のように2本のケーブルで繋げると思います。
無題

今回はこのような接続方法を"並行ケーブル"と呼ぶことにします。
最も基本的で簡単ですが、以下のような問題点があります。



  並行ケーブルの問題点① ケーブルが跳ねる(動く)
ケーブルが動く理由は射撃時の電流により電磁力が働くためです。こちらのページに詳しく書いてあります。電磁気学や物理学の問題でも解いたことがあるのではないでしょうか?ソレがそのまんま起こっています。
レールガンはウン kA・数 ms程度の電流が流れるため、上に載せた動画のように勢いよく跳ねます。
試しに電線の間隔r=10 mm、電流10 kAのときで計算すると、
\[F=\frac{μ_0 I^2}{2\pi r}l=\frac{4π\times10^{-7}\times10000^2}{2\pi\times0.01}\times1=2000\rm{[N/m]}\]ということで1 mあたり2000 Nもかかるようです。逆向きの電流なので反発する方向にかかります。
簡易的ですが数値計算もしてみました。電流が赤、磁束密度が青、電線にかかる力が緑で、矢印は方向(ベクトル)を示します。※磁束密度はy=0面だけ計算、力は適当な間隔で計算。デカすぎベクトルは非表示。
並行ケーブル

ケーブルが動くことの問題点として、
・跳ねたケーブルが人やものに当たる
・部品にストレスを加える
(ケーブル、レールガン本体、スイッチ、コンデンサなど)
・勢いでいろいろ動く
といった危険が考えられ、ケガや破損に繋がる恐れがあります。

また、回路や性能的な視点として
・運動エネルギーに変換された分が損失となる
・回路定数が変化する
という問題があります。
ケーブルが動くということは、レールガンに投入するはずだった電力が運動エネルギーに変換され損失となってしまうので、出力・効率を低下させてしまう可能性があります。
また、ケーブルが動くとケーブルのインダクタンスが変わって、レールガンの挙動に影響を与える可能性があります。ついでに言えば毎発毎発ケーブルの位置が同じというわけではないので結果が変わってしまう可能性があります。これは性能というより設計値・計算値とうまく合わなくなるのが問題かもしれません。


なお、解決策としてケーブルを固定するという原始的な方法がありますが、しっかりと固定しなければならず大変で、設備の移動も面倒です。



  並行ケーブルの問題点② インダクタンスがデカい
もう一つ回路的な視点からして、並行ケーブルはそもそもケーブルの配線インダクタンスが大きいということです。
インダクタンスは電線の周りにできる磁束の量(と比例関係)ですから、上に載せた図のとおり磁束がいっぱいでインダクタンスが大きいことがわかります。

下の図は今回の実験予定の回路・定数でのシミュレーション波形で、配線インダクタンスを0.2 uH(緑色)と、1 uH(赤色)に変化させてみました。グラフは上からレールガン電流、レールガン投入電圧、プロジェクタイル速度(単位m/sに読み替えてください)です。
レールガンシミュレーション

この条件では配線Lが小さい方がわずかに速度が速い=出力が大きいことがわかります。

放電経路中にインダクタンスが存在(つまり配線Lが存在)すると、電流を制限しつつ一旦そこにエネルギーが蓄えられるような動きをするため、ピークを抑えてゆっくり放電するのに向いています。これは電流波形と投入電圧波形から伺うことができます。
こういう波形を想定して設計したり配線Lを回路定数としてうまく使えるといいのですが....。
多くの場合では配線インダクタンスは小さい方が出力がアップするようです。



  同軸ケーブルの利用
並行ケーブルの問題の解決法として、代わりに同軸ケーブルを使う方法を思いつきました。

同軸ケーブルは下の図のように同心円状に電線を重ねた形状のケーブルです。外側が外部導体、真ん中が内部導体と呼ばれています。
同軸図

具体的には外部導体・内部導体を下の図のように配線しようと思ってます。要するに同軸ケーブルの一般的な配線です。
同軸接続回路図

同軸ケーブルには様々な特徴がありますが、今回は
・外部導体と内部導体に逆方向で同じ量の電流を流した場合、生じる磁束が打ち消し合ってケーブルより外側の磁束がゼロになる※理想状態
・同軸という物理的形状
という性質に注目しました。

ひとつ目は言わずもがな、磁束を少なくできればインダクタンスが小さくすることができます。そして外部に磁束が生じなければ他の配線と干渉する・されることはなく、(他の配線との)変な電磁力がかかったりすることはないと考えています。
ふたつ目については、内部・外部導体間にかかる電磁力の話で、きっと外部導体が広がる方向にかかるだろうなー(てきとう)とも思いつつ、同軸なら均等に力がかかって打ち消されたりするんじゃねーーー?という安易な考えです。

内部・外部導体間にかかる電磁力については正直よくわからなかったので、先程と同様に磁束密度と電磁力をシミュレーションをしてみました。同軸みたいな形状をどう計算すればいいかわからなかったので、大量の細線を配置しています。もっと言えば計算では導体に厚さをもたせられていないので、そのへんがちょっとおかしい可能性があります。
同軸ケーブル1

磁束は外部導体より内側に生じ、外側にはほとんど生じていないことがわかります。インダクタンスを小さくできそうです。

電磁力はやはり外部導体が広がる方向にかかるようですが、各地点の力が打ち消し合いゼロとなるようです。ただしこれは外部導体が剛体の場合で、現実は平編銅線などを使うのでもうちょっとふにゃふにゃです。でも並行ケーブルよりか全然動かなそうです。
漏れた磁束による他の配線との電磁力もかなり小さそうです。

試しに少し偏心した場合を計算してみるとこんな具合で、偏心を戻そうとする力がかかるようです。
同軸偏心1

電磁力については現実的な要素が多く効いてきそうですので、実験で確かめることにします。うまく行けばほとんど動かない気がします。



とりあえず理論編としてはこんなもんで、次は実験に使用する同軸ケーブルの製作と定数測定です。
次の記事→レールガンに同軸ケーブルを使ってみる②製作編

レールガン電源の製作とか改良とか

大した話じゃないです。

今までレールガンの実験を行ってきましたが、携行型レールガンの開発で色々と知り、昔の実験用電源では問題があることがわかりました。

↓今まで使ってた電源部の例(おもに写真左側)
無題

まず、昔の電源はコンデンサやサイリスタをその都度集めてテキトーに組み立てていました。しかしそれではコンデンサの個体差や配線インダクタンス、抵抗などのパラメータが毎回変わってしまい、実験結果に影響を及ぼす可能性がありました。配線L・R自体も大きくなりがちでよろしくありませんでした。
細かく変えて色々試せるのは良かったですがデメリットも大きすぎました。

もう一つ、クローバ回路(要するに還流ダイオード)が必要な場合があるということを知ったものの、それを取り付ける場所がありませんでした。


そんなわけで、これらを解決できるいい感じの電源を作ってみました。
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一応回路図はこんな感じ。
無題
配線を電気的にも物理的にも強化したい・固定したいということや、還流ダイオードに使えそうで家にあるのがSOT-227パッケだったということで、アルミ板でバスバー作って組み立てました。銅じゃないのはケチだから。
不格好かもしれないですが、これは配線L・Rを考えてできるだけ最短距離で配線しているためです。
出力端子はダイオードのネジのところなので配線しやすいと思います。
コンデンサは水筒なので交換して容量を変えることができます。小規模実験向けの電源なので、今のところは5600uF(最大560J)と10000uF(最大1kJ)を考えています。バスバーを延長することもできるので、必要ならばもっと大きなエネルギーにすることもできます(でもサイリスタが持たなそう)。


ついでにサイリスタドライバの方も改良を行いました。
ドライバは大昔にNT京都用に作った発射ボタンを引き続き使おうと考えていましたが、ょゎょゎ駆動で不安があったので、っょぃドライバの基板を作って交換しました。ガワは使いやすいのでそのままです。
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横においてあるのが旧基板です。

波形はこんな感じ、ゲート電流の立ち上がりが遅いけどギリギリ許せるレベル....
GDTをPQコアで作ってみましたが漏れLがちょっと大きかったです。ET積はいい感じ。
FSLiO0DaQAARWif

旧基板はコンデンサ電圧検出(一種の安全装置的なもの)などもありましたが、あまり必要なかったので今回はそれも撤廃してより実験向きにしました。


これで今のところは安定した実験ができそうです。

携行型レールガンを作った

いままで公開してなかったんですが,携行型レールガンを作りました。以前みたいに作るって言って作れなかったらなんか嫌なので....。

メイン画像_極薄透かし


  スペック
入力エネルギー:360 V  7.5 mF  486 J
出力エネルギー/速度:約20~25 J / 約550~600 m/s
レールガン変換効率:平均4.68 %  最大5.27 %
プロジェクタイル:針金(アーマチュア兼飛翔体)
連射間隔:最短5 秒
射程:?
装弾数:6 発
照準器:レーザーサイト
電源:リポバッテリー(4S)
本体重量:約3 kg


界隈的空き缶換算だと,アルミ缶は多分5個以上いけると思いますがエイムがガバって3個までしか貫通したことがありません。
スチール缶は1個が限界のようです。



  推しポイント
この作品の推しポイントは
  • 携行型である
  • 高効率・高出力である
  • 連射できる
  • 安全対策を施している
です。

以前の個人製作のレールガンの多くは「プラズマ式」で,大きなエネルギーを入力する必要があることや数発ごとにメンテナンスが必要など,携行化するには難しいものでした。
今回採用した「高オーグメント型・コの字ソリッドアーマチュア式」は,少エネルギー領域で高効率で,メンテナンスも数十発ごとでいいという特徴があり,上の3点を実現することができました。ついでに言えば,加速力にプラズマ圧などの補助を利用せず,純粋な電磁力のみで加速する正真正銘の「レールガン」というのもウリのひとつです。
高出力な充電回路を開発したことも携行性と連射性に寄与しています。
まぁ,連射についてはレールガンの中では早い部類って感じですけど...。

安全対策については,保護回路を設けるのはもちろんのこと,運用上の安全も「本体」と「管理装置」の2つで構成することで確保したつもりです。

↓本体
メイン画像1
↓管理装置
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作っといていうのもアレですが,レールガンは本質的に危険なため,何らかの安全対策をしたほうが良いと思われます。持ち運べるものですと各種法律などに抵触する可能性もあります。※EMLは銃刀法には該当しないとされています。軽犯罪法的な観点です。
そこで管理装置で本体を管理して,実質的に携行不可・限られた空間でしか運用できないようにしようという考えです。
管理装置は,特定のWiFiに接続すること・特定のサーバーに接続すること・GPSで自宅付近にいることが確認できなければ起動できません。さらに,本体との通信は赤外線を使用し,電源もコンセントにすることで室内にいる確率を高めています。起動したあともパスワードを入力する必要があり,これは私しか知らないので,他人の運用は難しくなります。
通信は簡易的ですが暗号化してあります。通信が途切れて一定時間が経過するとレールガンが無効化されたりなんて機能もつけました。あと単に設計ミスですが通信距離がめちゃんこ低いのも一役買っt
まぁ色々抜け道がある気がしますが,それはカッターナイフを乱用するのと同じようなものです。



  動作風景
こんな感じで動きます。大衆向けのちゃんとした動画は気が向いたら作るかも。




  中身の紹介
全部は紹介しきれないので概要程度に留めます。とか言っておきながらいっぱい書いちゃったかも。

製作当初,技術的にも物理的にもあるもの組み合わせて適当に作っちゃおうぜという設計をしていました。なので基本構想として,それまで作ったレールガンコンデンサ充電器をもとにして,それを以前作ったコイルガンみたいな筐体にまとめるという形になっています。筐体はコイルガンと似せて兄弟感(?)を出したかったのもあります。

全体構成
図

ちょっとだけ外装を開けて中を見てみた感じ
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全体回路図
回路図PCB版


1.レールガン本体・アーマチュア
レールガンは高オーグメント型・コの字形ソリッドアーマチュア式です。
オーグメント型は磁束密度を強化するための"オーグメントコイル"を装備していることが特徴で,これにより少入力エネルギー領域で高出力・高効率で安定して発射できるようになりました(茶色い部分がコイル)。
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アーマチュアはアルミ針金をコの字に曲げたソリッドアーマチュアで,これ自体が飛翔体(プロジェクタイル)となります。
コの字にすることで電磁力がレール方向にもかかるため接触が良くなります。針金なので柔軟で,低コストで作りやすいというのも利点です。
後ろのほうが少し曲がってるのは装填機構で押しやすくするためです。
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これら方式の採用と工夫のおかげでレールの損傷が減り,メンテナンスをあまり行う必要がなく,連射性に寄与しました。
さらに今回,損傷に強いとされる銅タングステン製レールを使用したためさらなる安定性が期待できます(※まだそんなに撃ってないからわからない)。
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高オーグメント型・コの字形ソリッドアーマチュア方式は2014年にはじめて考案・製作して,以後色々と遊んできたため使い勝手がわかり,本作品への適用がスムーズにできました。というかこれを開発できたこと自体が本作を作る動機になっています。


2.マガジン・プロジェクタイル装填機構
はっきり言って失敗した部分です。
マガジンは実銃のボックスマガジンと同じような構造になっていて,プロジェクタイルを棒で押すことでレールガン内に挿入します。
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装填
レールガン本体の寸法的にレールが上下になるような配置としてしまったので,マガジンも必然的にプロジェクタイルが縦になるような設計になりました。しかしこれが良くなかったようで,マガジンのバネが押し戻す力で針金アーマチュアが変形してしまい装填がうまくいかないときがあります。バネが強すぎるのかもしれないです。
挿入する棒とツマミの部分もなんだかスムーズに動かなかったりします。構造的欠陥はもちろんのこと,レールガンで発生する煤が挿入する棒やマガジンにこびりついてそれが摩擦になっているようです。あとは,プロジェクタイルが手加工なので寸法が若干違ってキツキツ/ガバガバになってたり,レールの損傷でスムーズじゃないとかそういうのもあります。
まぁとにかくこの部分はジャムったり引っかかったりという感じでそもそもの構造が良くないようです。だからといって改造もできなさそう...。
射撃による煤・プラズマが回路側に入り込むのを防ぐために仕切りを設けたのは正解でした。


3.レールガン電源・発射回路
回路図でいうとレールガンの電源(コンデンサ)および放電経路周辺を個人的にそう呼んでいます。
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レールガンの電源のコンデンサは360V 7.5mFの486Jです。
主スイッチは携行化・連射のためディスクサイリスタを使用しましたが,使うにあたり「サイリスタをしっかり駆動してみた」や「ディスクサイリスタを分解してみた」で書いたような工夫をしています。というかしなければならなかった。本作品の特有の動作として,充電後にアーマチャが挿入されることも考えられ,その場合サイリスタのdv/dt定格を超過する恐れがあったため,スナバもつけておきました。なくても大丈夫かもしれませんが念のため。
クローバ回路(還流ダイオード)も付ける必要があったのですが,本来レールガンと並列につけるべきところがコンデンサに並列になっています。これはダイオードの定格不足が根本的な原因なんですが,レールガンに並列の場合,ダイオードがオープンモードで飛んで,サイリスタも巻き添えで死んだんすわ。でもコンデンサに並列ならダイオードが飛んでもクソ高いサイリスタは飛ばないよね?という理由でこうなっています。
連射間隔が5秒なのは,これら回路とレールガン本体の熱的負担を減らすためです。高い部品なのでどうしても慎重になってしまいます。
あとは当たり前ですが主電流が流れる配線はできるだけ太くして抵抗を小さくすることで効率を上げようとしています。


4.バッテリー・制御回路
携行化にはバッテリー駆動が必須で,今回は寸法的にLiPoの4S(14.8V)にしました。動画を見てもらえればわかるかと思いますが,レールガンの後部の蓋を開けてそこに適当に押し込めます。

制御基板には昇圧コンバータとサイリスタドライバが搭載されており,それらの制御やディスプレイ,トリガ,通信などは1つのマイコンで行います。
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昇圧コンバータはリポの15V程からレールガン電源のコンデンサに充電するものです。以前製作した昇圧チョッパをもとに,それに降圧コンバータを組み合わせたような形をしています。さらに出力にはリレーによる物理スイッチがあり,射撃時に発生する逆電圧やノイズを遮断します。定電流ヒステリシス制御なので0Vから最大電圧の360Vまで安全に素早く充電します。やりようによっては150W位は出るんですが,前述の理由でそんなに早く充電する必要がないため,100Wほどで設計してコンバータでの損失(発熱)を低減させました。
サイリスタドライバはさっき書いた通りしっかり駆動する回路を搭載しています,というかこのためにいろいろ実験したんすけどね。
基板の起動時には簡易的な自己チェックが走ります。ADC値が適正かどうか,コンバータのMOSFET達をONしてみて電流が流れるか流れないか,リレーをオンオフさせるとか,それで壊れていないかなどを判断します。UVLO,OVP,OCPなど基本的な保護回路も搭載してあります。


5.管理装置
役割は前述のとおりです。
ESP32を主体とした制御回路,キーパッド基板,電源基板をいい感じのケース(タカチ CH型)にいい感じに収めました。
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  総評
全体的にはまぁまぁ良く出来たかなと思っています。
前作のコイルガンでは重心が前すぎてヤバかったので今回は中心にして持ちやすくなりました。が,3kgあるので重くてその点では悪化しました。
各所に不満点がありますが,特にプロジェクタイル(発射物)のマガジン・装填周りは失敗しました。
そのほか,毎度のごとく機械的な構造や強度は全く計算もせずテキトーに作ってしまったのでヤバそうなところが多々あります。今度なにか作るときはなんとかしたいです。

作り始めた当初はある物でサクッと作っちゃおうという感じだったのですが,うまく動かず試行錯誤をしてたら丸2年が経っていました。今ならもっと良い設計ができるでしょうが,それはこれを作ってからわかったことや勉強したことがいっぱいあったからです。
試行錯誤と勉強のおかげレールガンのシミュレータが作れて色々遊べるようになったのも良かったです。

持ち運び可能なレールガンを作ると言うのは昔からの夢でしたので,ひとまず完成して嬉しく思っています。



  今後
・マガジンのバネを柔らかくする
マガジンのバネが硬すぎ疑惑があったのでもう少し細いピアノ線でバネを作ってみようかと思います。

・レールの損傷が連射性に及ぼす影響の検証
実は最初はただの銅レールで実験していたのですが,レールの損傷と装填機構の不具合も相まって,20発程度撃つと装填しにくくなっていました。
そこで損傷に強い銅タンレールにしたわけですが,現状15発くらいしか撃ったことがないので,もっと撃ってどれくらい耐えられるのか試してみたいです。今のところは問題ないように感じます。
本作品に限らず銅タンがどれくらいのポテンシャルを持っているのか見てみたいです。

・全体の修繕
2年前から試行錯誤してきたのでいろんなところにガタが来ています。特にアクリル部品なんかはパークリぶっかかったりネジを締めすぎたりしてヒビ入りまくってます。
修繕してきれいな状態でNTなどのイベントでお見せできるといいなと思っています。



  その他写真

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